食の未来を考える人たち。<滋賀>自然との共存、人とのつながり

日本でもっとも大きい湖である琵琶湖がある滋賀県。この滋賀県内で農業にたずさわる人びとの環境意識の高さは、日本有数とも言われているそうです。その意識の背景にあるものとは?

滋賀県農政水産部農業経営課 農産ブランド推進室 室長 臼居仁司さんにお話をうかがいました。

「琵琶湖を何とかしなきゃいけない」 この気持ちが農家の人びとの意識を変えた

滋賀県の真ん中には日本で一番大きな湖、琵琶湖があるんですが、そこから出ていく川はたったの一本しかありません。あとは全部琵琶湖に注いでいます。稲を植える前に加える肥料や除草剤は、大雨が降ったりすると濁水とともに流れ出してしまうんですね。それが琵琶湖を汚すひとつの原因になっていました。これは何とかしなきゃいけない、と。

そこで、もう少しデリケートに水を管理しよう、また、化学肥料や化学合成農薬もなるべく使わないよう、従来の半分以下にしようという「環境こだわり農業」という取り組みを平成13年から進めてきました。環境こだわり栽培は、手間がかかり収量も不安定になりやすいので、取り組み農家に対して平成16年から日本で初めて環境直接支払い制度を導入しました。

平成19年からは国が「農地・水・環境保全向上対策事業」を始め、直接支払い制度を運用するようになりました。滋賀県の稲を植えている水田面積が3万3000ヘクタール。そのうちの3分の1近い約1万ヘクタールが「環境こだわり農業」です。

農家だけではなく地域ぐるみでかけがえのない自然を受け継いでいく

「農地・水・環境保全向上対策」は、滋賀県では「世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策」という事業名で、子どもも含めて非農家の方も参加してもらって、地域の自然環境を次代につないでいこうという取り組みを進めています。そんな農家の方々の努力もあって、田んぼの水が流れ込む川の田植え時期の透視度は高くなってきています。

また、田んぼの中に多様な生態系を取り戻し、フナやコイを呼び戻そうと「魚のゆりかご水田」に取り組んでいます。昔は、春にフナやコイが小川を遡上してきて、田んぼで卵を産み、孵化した稚魚は田んぼで育って琵琶湖に帰っていましたが、田や川の整備により、その経路が途切れてしまいました。そこで、以前のように魚が生まれ、育つ田んぼにしようというのです。

農家の方は、排水路を完全に仕切らない仕組みを作ったり、魚やエサとなるプランクトンや水生昆虫が元気に棲めるよう農薬を使わないなど工夫や努力をされています。田んぼで育ったフナを川に帰す作業は、今回、イオンさんも取り組んでいただきましたね。

魚や生き物とのふれあいは、子どもたちだけでなく、小さいときに川で魚を捕って遊んでいた世代、40〜50才代のお父さんが非常に喜んでいたのが印象的でした。このような取り組みを続けることで、非農家のお子さんにも自然に興味をもってもらいたい。やがて農業にも興味をもって「将来は農家になりたい」という子どもが出てきてくれると嬉しいですね。

食の安全性が危ぶまれるなか、農にかかわる人びとに求められているもの

いま、農業にかかわる人に求められているというか、県民や消費者のニーズとして一番大きな声というのが「地産地消」です。安全安心なものを食べたいと。食品の偽装表示や異物混入などの事件もあって、急激に地産地消を求める声が強くなりました。

そんな声の中、探してみると、滋賀県内各地にもともと古くからの伝統野菜が多くあるんですね。それらをお弁当に使って販売してみるなり、スナック菓子やスイーツにしてみるなり、また和洋のシェフに新しいレシピを考えていただくなりして、いろんな方に知ってもらう機会を作ることが大切だと思っています。

そのためにはやっぱり農業サイドだけではうまく広げきれませんので、イオンさんのような流通や販売事業者など商業サイドと連携して、商品開発をしたりプロモーションを展開していくことは、非常に意義深いことだと思います。

消費されて循環する農産物だからこそ流通の視点も組み込んでいく

滋賀県には235の小学校があるんですが、なんらかの形で農業体験をしていただいているのが200校くらいあります。こうした子どもたちへの食育なども、従来の行政と学校だけの事業よりも、今回のイオンさんのようにご協力いただくことで、取り組み自体の厚みがすごく増すと思います。宣伝力やイベントの運営力もやはり違いますよね。

スーパーに買い物に行ったとき、地元のお米があれば「ぼくらが授業で刈り取ったお米かもしれない」って思ってくれるかもしれない。お母さんだって、あの時に田植えしたお米だって言えば、少し高くても買ってくれるかもしれません。

農産物というのは、生産して、売られて、消費されて、また生産して、と循環しています。
従来の教育の中だと栽培することとか生き物に関することとか、知識だけで終わってしまう部分が多かった。それが流通の視点も入ることで、ちゃんと生活の中に組み入れられた体験になるのかなと期待しています。

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